医療関係者の皆様へ

見えない・見えにくい状態になった方は、必ず眼科を受診しています。その際、視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)についての情報、すなわち、見えない・見えにくくなっても生活を送ることができるようにサポートしてくれる、リハビリテーションサービスや福祉制度の情報を皆様から患者さんに教えていただければ、どんなにかその後の生活が良くなるか、それは、皆様の想像を遙かに超える効果があります。
そこで、 医療関係者の皆様が、患者さんにアドバイスしたり情報提供を行う上で、役立つ情報を掲載しました。参考にしていただければ幸いです。

医療関係者の皆様へ

目次

視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)の効果

眼疾患が進行して、だんだん見えなくなってくると、一人で外出できなくなったり、好きだった読書ができなくなったり、仕事を続ける事や家事などの日常生活を送ることが難しくなってきます。そうなると、患者さんはどんどん不安になってきますし、「見えなくなったら何もできない」と思い込んだりして、職場に迷惑をかけるからといって仕事を辞めてしまったりします。

例えば、まぶしくて外を歩けないと訴える方に遮光眼鏡を処方したらまぶしさが軽減して昼間でも外を歩けるようになるとか、タブレット端末の拡大機能を使って文字が読めることを示す等、「見えにくくてもそれを補うことができる方法がある」という実例を示すと、そのことによって「見えにくくても生きていける」という実感を患者さん自身持つことができます。そうすると、それをバネにいろいろな事に挑戦しようという気持ちが生まれてきます。これが「視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)」の重要な効果です。

この見えない・見えにくい状態でも様々な工夫や機器の助けを借りて生きていけるという実感は、なるべく早く患者さんに持っていただく方が、その効果も大きいのです。また、「職場に迷惑をかけるから」という理由で、歩行訓練や日常生活訓練、職業訓練等の存在を知らないうちに仕事を辞めてしまう方が多いのですが、そのようなことを防ぐためにも、視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)を患者さんに体験していただき、「見えない・見えにくい状態でも生きていける」という実感にたどりつけるように、医療関係の皆様から患者さんに情報を提供していただきたいと思っております。

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視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)での役割分担

視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)で、最初のスタートは、見えない・見えにくいことでご本人が何に困っているかを聞き取ることです。文字の読み書きができなくなったこと、一人で目的地まで移動できなくなったこと、見えにくくなっていく中で進路をどうするか、就職の問題、仕事を継続できるかどうか、料理や掃除、洗濯などの日常的なことが出来なくなったこと、経済的な問題など、その困りごとは多岐にわたります。

その中で、文字の読み書きに関することについては、患者さんの視機能に合ったメガネを処方することが一般の医療機関で行っていただく第一段階のロービジョンケアです。その次の、拡大鏡の倍率の決定、タブレット端末や拡大読書器等の機器の紹介と使い方の訓練などは、ロービジョンケアの知識・経験のある医療機関に依頼していただけると患者さんは非常に助かります。歩行訓練や日常生活の訓練、職業のこと、経済的な問題の解決などは、福祉行政や福祉施設、盲学校などが行うロービジョンケアなので、是非、福祉事務所、盲学校、社会福祉施設などの情報を患者さんに提供してください

なお、歩行訓練や日常生活訓練を受けたり、様々な福祉サービスを利用するためには、身体障害者手帳の取得が必要です。これらの制度毎に判定書、診断書が必要で、それらを書いていただくのも医療機関での役割です。

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ロービジョンケア(ロービジョン外来)がある医療機関

見えにくい方に対する細かい視機能検査をしたり、その方が良く見えるようにするために様々な補助具を紹介したり、音声で読み上げてくれたり文字や画像を拡大して使えるパソコンを紹介したりすることは、見えにくい方の見えにくさを補うためにとても有効な手段ですが、そのようなロービジョンケアをおこなうためには、一人の患者さんに対して1回1時間以上の時間がかかりますし、補助具等の紹介をするためには、それをそろえておかなければなりません。

そのようなことを普通の眼科医院などでおこなうことは、とても困難なことだと思います。そこで、ロービジョンケア(外来)のある医療機関を患者さんに紹介していただくことが有効な解決策となります。
日本眼科医会のホームページに、ロービジョンケアを行っている全国の施設が一覧で載っていますので是非ご利用ください。

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ロービジョンケアと地域連携

(1)スマートサイトとは(地域で連携しておこなうロービジョンケア)

現在の医療の中では、視機能の回復を望むことのできない患者さんに対して、視覚障害者に対する福祉サービスを受けることや、盲学校や点字図書館などの施設を紹介することは、「あなたの病気は治りません」と患者さんに告げることを間接的に意味することになるので、心理的な負担が大きいということ、福祉制度のことや福祉サービスの情報をドクター自身が集めることの困難さもあり、ドクターが患者さんに福祉施設等で行われているリハビリテーションサービスの情報を伝えることができないということがありました。

そのような状況を少しでも緩和する方法として、アメリカの眼科医会が実施したのが「スマートサイト」というシステムです。このシステムは、良い方の目の視力が0.5以下になった患者さんに、地域で見えない・見えにくい方のために視覚障害リハビリテーションサービスを提供している施設等の情報をリストアップしたリーフレットを患者さんに手渡すという方法です。そのリーフレットを手渡された患者さんは、自ら必要とする施設等に連絡してサービスを受けることができるのです。

我が国にこのシステムが紹介されたのは、2006年ごろからです。各県によって運用のされ方に違いがありますが、よく見える方の目が0.4を下回った患者さんにその県の福祉の窓口や視覚リハサービスの受けられる施設をリストアップしたリーフレットを手渡しています。

ぜひ、スマートサイトを活用いただき、視覚障害リハビリテーションの情報を必要な患者さんに届けていただければと思います。
リーフレットの入手や、各県の詳しい状況は、各県の眼科医会に連絡してください。日本眼科医会のホームページの中に都道府県眼科医会一覧が掲載されていますのでご利用ください。(各県の事情により眼科医会独自のホームページがないところがあります)

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(2)視覚障害者の専門的な相談やリハビリの情報が得られる施設

視覚障害リハビリテーション(ロービジョンケア)の情報を持っているのは、各県に必ず設置されている盲学校、点字図書館(視覚障害者情報提供施設)等です。
また、視覚障害の方が福祉制度を利用したい時の窓口となるのは、各市町村の福
祉事務所、障害福祉の担当です。
参考
全国盲学校一覧
全国点字図書館一覧(全視情協会員施設)

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(2021年11月21日改訂)